公開授業
公開講座等の推進
吉田松陰研究所開設記念として、吉田松陰、松下村塾、また明治維新の各専門分野で日本屈指の研究者5名を講師として招聘し、平成30年10月に「公開講座・松下村塾と明治維新」を開催した。松陰研究者、歴史愛好家など、萩市内をはじめ山口県内外から250名が参加した。
令和元年度は、9月と2月に至誠館大学生対象の集中講義「日本近代黎明史」を、一般市民も聴講できる「公開授業」として実施した。3日間、連続15講義で、毎回30~50名の萩市民が聴講した。
令和2年度は、コロナ感染防止のため、集中講義「日本近代黎明史」は学生のみの出席とし、一般市民対象の公開授業は中止した。
平成30(2018)年度
吉田松陰研究所開設記念公開講座「松下村塾と明治維新」10月21日
- 講演1「私と松下村塾研究-刊行図書を中心に」京都大学名誉教授 海原徹
- 講演2「吉田松陰の海外認識と工学教育論」広島大学名誉教授 三宅紹宣
- 講演3「現代に生きる松陰先生-反薩長史観・誤解を超えて」産経新聞東京本社編集局編集委員 関厚夫
- 講演4「松下村塾の学びの実践-伊藤博文の場合-」国際日本文化研究センター教授 瀧井一博
- 講演5「早すぎた思想家:吉田松陰とその時代」金城学院大学教授 桐原健真
- パネルディスカッション
コーディネーター:至誠館大学学長 野村興兒
パネラー:海原 徹、三宅紹宣、関 厚夫、瀧井一博、桐原健真
令和元(2019)年度
令和4(2022)年度
令和5(2023)年度
「戊辰戦争における欧米列強の局外中立」 野村興兒(至誠館大学学長)
講座の狙い
日本近代黎明期の欧米列強の対日政策と列強内の力関係の変遷を明らかにし、我が国の近代化への影響を明らかにする。
講座の概要
東アジアへの進出は、英・蘭・仏が中心となり、一方ロシアは沿海州を中心とした南下政策をとるなか、突如として米がペリー艦隊を派遣し、和親・通商の各条約を調印し、続いて同趣旨の条約を4ヵ国とも締結(安政の5ヵ国条約)。英は朝廷や薩長の討幕派を援助し、仏は幕府を支持する立場をとり、覇を競うこととなるものの、激化する攘夷運動の対抗上、横浜に両軍を駐留させる。
メッセージ
歴史を学ぶことの意義は「過去を通じて未来を学べる」ことにある。「日本の歴史」は「世界の歴史」を学ばねば、十分の理解を得られない。
「ペリー来航と政治変動」 三宅紹宣(広島大学名誉教授)
講座の狙い
幕末の変動の画期となるペリー来航とそのことによって発生する政治変動の実態について明らかにし、明治維新を理解する出発点とする。
講座の概要
- ペリー来航と対外的危機
①ペリー来航、②ペリー来航の背景、③民衆の対外的危機、④日米和親条約・日米修好通商条約 - 開国をめぐる政争と安政の大獄
①開国論と攘夷論の性格、②徳川家定の後継者をめぐる政争、③安政の大獄 - 吉田松陰と尊王攘夷運動
① 松陰の生涯と世界認識、②松下村塾の教育、③工学教育論
メッセージ
吉田松陰の尊王攘夷運動について、単純な排外主義ではなかったことを正確に理解し、工学教育論についても触れたい。
「山尾庸三とヘンリー・ダイアー(工部大学校)」 野村興兒(至誠館大学学長)
講座の狙い
ペリー艦隊来航以来、わずか半世紀余りのうちに我が国は、欧米の先進技術を導入することができたのは何故か、その理由を明らかにする。
講座の概要
工部大学校の都検に選ばれたヘンリー・ダイアーは、理論と実践を統合した体系的、組織的な工学教育を行う新機軸を提案。工部省の山尾は欧米各国でも例が少ない本提案に賛成。開学以来211名の卒業生は、実業界・官界・学会等でパイオニアとして活躍し、工学会を組織、日本工学の中心的役割を担う。
メッセージ
明治の近代化は、決して薩長の力だけで成し遂げられたものではない。工部大学校の卒業生の多くは旧幕府の下級武士の子弟。
「久坂玄瑞の生涯」 三宅紹宣(広島大学名誉教授)
講座の狙い
久坂玄瑞の生涯について、吉田松陰のもとでの修学から禁門の変での自刃までをたどり、松陰の思想を継承していることを具体的に明らかにしたい。
講座の概要
1 生まれと修学
2 吉田松陰への入門と江戸遊学
3 長州藩の攘夷方針への転換
4 長州藩の攘夷決行と8月18日政変
5 禁門の変
メッセージ
久坂玄瑞は、吉田松陰の幅広い海外認識を受け止めて活動しており、その攘夷運動は単純な排外主義ではなかったことを明らかにしたい。