平成31年度事業計画書
目次
はじめに
明治元年から150年を迎えた昨年(2018)、維新胎動の地・萩市にある本学は、新たな研究拠点として「吉田松陰研究所」を設立した。また、地域とともに歩むとの観点から「至誠館クラブ」の創設や公開講座の拡充など地域貢献に積極的に取り組んで来た。一方、2018〜2019年を中期計画[整備期]と定め、教育の質の向上・大学ガバナンスの強化を目的とし、ワーキンググループを中心とし全学教職員が一丸となって動きを始めた。
かねてより懸案事項としてあげられていた、菅原学園との法人合併の認可を受け、4月1日より、「学校法人菅原学園 至誠館大学」として新たなスタートを切ることになる。
今年度は、中期計画[整備期]の最終年度を迎え、さらなる教育改革・ガバナンス強化を目指す。特に大きな改革として、1、内部評価・監事による評価を充実強化 2、教員評価をスタートさせる 3、中期計画に基づいたPDCAサイクルを回せる仕組みを生み、教職員一人一人が教育改革・ガバナンスの強化に関わる一年とし、[整備期]にあげられた項目を確実に達成する。以上3点を重点的に取り組む一年とする。
また、菅原学園内の組織である「経営戦略室」と協働し、大学IRの部門設立の準備し、次なる3年間の具体的な達成目標項目を設定し、中期計画[発展期]の策定を行う一年としたい。
1.教学運営体制の整備
1)学長を中心とする大学ガバナンスの改善
- 教学マネジメントの体制を構築した上でIR情報を利用した教育課程の適切性等についての検証を行う。
- 研究や社会貢献活動等の推進、学修環境の整備等に措置できる予算(いわゆる学長裁量経費等)を教育研究経費支出予算の5%以上を設ける。
2)学生募集体制の改善
入試と募集活動を統括する部局として「アドミッションセンター」を組織する。また、法人合併により「経営戦略室」との連携を強める。
- 萩本校
- 北浦地区・石見地区の高校訪問を強化する
- 成績優秀者奨学生制度による募集を強化する
- 東京サテライト
- 経営戦略室との連携を深め、募集活動の分析を行い募集する。
3)入試改革の改善
- 2021年度入試に向けた改革
2021年度入学者選抜より、現行の一般入試、AO入試、推薦入試が、それぞれ一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜に変更される。これらの変更に伴い、本学においても各入試区分においてアドミッションポリシーに基づく多面的・総合的に評価する入学者選抜の検討と決定を行う。また、この変更に伴い、多様な背景を持つ受験者を積極的に受け入れるための入学者選抜のあり方についても検討する。 - 質の高い私費外国人留学生の選抜に向けて
これまで、日本語能力を含め質の高い私費外国人留学生を選抜する入試に努めてきたが、入学後の退学者や除籍者は未だ存在する状況である。このような状況を改善するため、入学者選抜から入学後の状況について追跡調査を実施することで、入学者選抜の妥当性を図る。また、日本語学校や専門学校との信頼関係を軸とした連携を強化し、日本語能力が高く経済的にも安定している質の高い学生の受け入れを図る。
4)東京サテライト教室の教育環境の整備
- よりきめ細かい修学および生活指導の実施
- 基礎ゼミ及び専門演習、卒業研究指導等は上限のある少人数制にする
- 履修希望の多い学科目は分割して開講する
- 就職活動準備教育を講座として実施
- 日本語能力試験受験促進
5)中期計画実施体制の整備
昨年(2018)、中期計画マスタープランを設定した。2018〜2019年を[整備期]、2020〜2022年を[発展期]、2023〜2025年を[充実期]と定めた。
整備期における重点的に行う施策は、「教育の質の向上」「ガバナンスの強化」「法人合併」、そして「新学部設立準備」である。
その中で、「教育の質の向上」「ガバナンスの強化」に関しては、中期計画に落とし込み、全19部門・領域において200項目を超える、具体的な達成目標項目をあげて取り組みをスタートさせている。本年は、その完成年度であり、全教職員が一丸となって全ての項目を達成したい。また、次なる3年間における達成目標項目を策定する一年とし[発展期]と呼ぶにふさわしい取り組みの準備を行なう。
2.教育・研究関連実施計画
1)教育の質向上と学士力の担保
- カリキュラムの構築
- カリキュラムマップに基づく、科目ナンバリングを進め、DPと関連づくカリキュラム体系の整理を行う。
- 茶道と萩焼を通して日本の文化を学ぶ「日本の伝統文化演習Ⅰ・Ⅱ」を新規科目として設け、萩本校および東京サテライト教室で開講する。
- 学習技能の習得と日本語リテラシーの強化
- 主に基礎ゼミを通じて、初年次教育の中でアカデミック・スキルズの習得プログラムを実践する。
- 外国語教育の充実
- 少人数クラス制、能力別のクラス制により、学生の個別的成長を図る体制づくりを始める。
- 上記クラス編成の効果として、一部のクラスでは外国語のみで行う授業を試みる。
- キャリア教育
- 萩本校においては、YFL育成プログラム読み替え科目を増やす事を目的とした検討を教務委員会で進める。
- 公務員対策講座、社会福祉士受験対策講座、その他資格に関わる試験対策講座を正課外の取り組みとして整備し、教育プログラムの一つとして全体に周知する。
- 進路支援委員会と協働し、就職活動と連動した教育プログラムを検討する。
- 授業方法の改善
- 授業評価アンケートの回収率70%を目標とし、PDCAサイクルとしての授業内容の見直しにかかるエビデンスを確保する。
- GPA制度の確立と成績評価基準の確立
- 平成31年度からのGPA制度導入に伴い、評価の可視化および科目間の成績評価の平準化を進め、教育の質保証の向上を図る。
- 上記項目の具体的内容として、ルーブリック評価を用いた成績評価基準の明示を推進する。
2)研究支援
- 科学研究費を中心とした外部資金を獲得するために、学内の情報提供から申請手続きまでのサポート体制を整備する。
3)教職員の意識向上
- 業務に関する専門知識の習得や戦略的な企画能力の向上、管理運営能力の向上等を目的とする専任教職員の全員が参加するSDを実施する。そのために、以下の研修を開催する。
- 教育によるICT化の現状と課題について
- 留学生の大学生活におけるサポート体制の在り方について ―入学から卒業まで現状と課題から―
- 教育サポートスタッフの資質向上を図るために、担当者へのアンケートを実施し、状況の把握・分析を行い、FD研修として共通理解をはかる。また、年間2回程度の研修を実施する。
- スタッフへのアンケートを実施し、分析結果を踏まえてFD研修を行う。
- 学生による授業評価の結果について、結果を分析・検討し、授業の改善を図るためのFDを実施する。
3.社会連携・地域貢献
1)高大連携
大学教育と高校教育の連携を円滑にするため協定締結した近隣の高等学校は平成30年度に1校、さらに平成31年度にも1校と協定書の締結を行う予定としている。
事業の内容については以下の通りである。
- 大学・高校相互の講師派遣
- 大学の授業への高校生徒の受け入れ
- 高校生徒の授業、探究活動などへの大学の受け入れ、協力
- 大学の学生の教育実習、インターンシップなどへの高校の受け入れ支援
- 大学・高校の実施する課外活動における交流活動の実施
- 大学・高校の実施する行事への相互協力
- 大学・高校による地域貢献活動への協働
- その他、大学・高校の協議の結果に基づく事業
2)公開授業・公開講座・出前講義
生涯学習の拠点となる大学として、積極的に公開授業・公開講座・出前講義を開催し、シニア世代の新たな受け皿となる取組を実施する。
3)スポーツ及び文化連携
- 至誠館クラブ(地域貢献活動としての総合型地域スポーツクラブ)
昨年は、「設立準備委員会」を、「至誠館クラブ運営委員会」と改め、再スタートを切る年となった。11月、設立記念講演会が開催され、元柔道オリンピック銀メダリストを演者として招聘し、200名が集い市民にも喜ばれる良き機会となった。また、翌日の大学祭に合わせ柔道教室を開催し、50名の地域のちびっこ柔道家が汗を流した。現在、「至誠館クラブ」には文化教室3教室、スポーツクラブが1クラブ設立され事業展開が行われている。今年度においては、さらに発展させるべく以下の二つを強調点とし事業を拡大する。
[2019年度強調点]- イベントの開催やプログラムの増設および充実を図る
- 広報活動の強化
- 地域スポーツ研究所
昨年は、地元萩市の最大のスポーツイベントである第19回「維新の里萩城下町マラソン」の実行委員会より委託を受け、参加ランナーの消費行動・大会満足度等の調査業務を行った。今年、春には実行委員会に報告書を提出し、次回大会のホームページに掲載される予定で進めている。(前回大会報告書は大会ホームページに掲載されている。また、県のスポーツ関連の研修会の講師派遣、萩市の健康づくり教室の講師派遣も行われた。
今年度は上記活動を継続し、さらに研究機関として県・市と協働し、市民の健康づくり、スポーツ推進に貢献する。
4)吉田松陰研究所
吉田松陰の研究拠点として、研究所を広く公開するとともに、松陰先生没後160年を記念した公開講座を開催する。また、文献収集をさらに進め、研究者のネットワークづくりを充実する。
5)大学施設開放
- 附属図書館の一般市民への開放
- 大学諸施設の貸し出し
- 災害避難地としてのキャンパス開放
6)学生の地域ボランティア活動に対する支援
- 地域ボランティアの受付窓口を学生生活係に集約
- 地域ボランティア情報を学生や教職員に提供
- ボランティア参加者の送迎支援
7)他大学との連携強化
「やまぐち未来創生人材育成・定着促進事業」(「COC+事業」)に参加し、県内の他大学との連携をはかり、地域に資する人材育成及び地域への就職支援について情報を共有し協力する。
4.学生生活支援
1)学習支援
- 図書館を学習拠点とするための環境整備
学生の図書館利用を増やすための方策として留学生の読書環境を整えたり、図書選定にあたって学生ニーズを調査したりして、学習拠点となるような整備を行う。
また、課題解決型学習(PBL)やアクティブ・ラーニングを推進する本学にとって学生の学習支援のための拠点となるラーニング・コモンズの整備も必要となっている。萩本校図書館内での無線LAN環境は整備されているので、次はグループ学習コーナー設置を進めていく。
さらに、教員と連携して授業成果のロビー展示や地域貢献に繋がる活動を支援する。 - 学習指導の強化
教職員への周知を進め、ポータルサイトを活用した学生情報の共有と、学生が抱える問題の早期発見および解決に努める。
2)生活支援
- 学生相談室の運用
新たに整備した学生相談室規則に則った運用を開始する。 - 学生満足度調査の実施
学生生活全般に関する満足度調査を実施、調査結果を分析し学生の満足向上を図る。 - 社会人学生に対する育児支援体制の整備
社会人入学制度の整備後、萩市との包括協定を利用し保育園と提携を結び、育児支援体制を整備する。 - 奨学制度の改善
特別奨学生(成績優秀者)の拡充を図り、経済的支援の充実を図る。 - 構内交通マナーの指導の強化(萩本校)
「学生入構許可証」の申請者に対して、構内交通ルールに関する講習を行い、修了者に対し許可証を交付する。 - 児童養護施設等出身学生の支援
学生委員会の教員の中から児童養護施設出身者の担当教員を決定し、学生本人の指導および出身施設と連携し情報の共有を行う。
3)就職支援
- 外部団体との協働によるインターンシップの充実と活用
- 萩本校においては、山口県インターンシップ推進協議会や萩市商工会議所と連携し、萩市内でのインターンシップの受け皿を増やす。
- 上記項目に関連して、YFL300番台科目として企業連携型インターンシップや地域協働型インターンシップの実施可能性について検討する。
- 東京サテライトにおいては、留学生のインターンシップ実施の可能性を検討する。
- 社会に求められる学生の汎用性能力の獲得への支援
- 外部テスト(一般教養模擬試験に代えてPROGテスト)を全学年対象に実施し、フォローアップ研修を重ねる事で、学生の汎用性能力の獲得につなげる。
- キャリアアップセミナーを1年間定期的に開催し、学生の就職活動の動機付けを高める。
4)同窓会の運営
昨年度設立された、萩女子短期大学、萩国際大学、山口福祉文化大学、至誠館大学の統一同窓会「美萩会」による大学支援の強化を図る。
5.施設設備整備計画
1) 萩本校の施設整備計画の策定
萩本校は平成11年に開学し、20年目を迎える。建物について、修繕や改修を適切に行うための施設整備計画を策定する。さらに、定期点検等により、適切な維持管理も行う。
- 施設整備計画を策定
2)東京サテライト教室の教育環境の整備
東京サテライト教室の学生に対する利便性の向上と学習環境の整備を進めるため、東京サテライト教室を豊島区池袋駅北口地区に集約する取り組みを行い、平成30年1月に東京都豊島区池袋1丁目の建物に集約が完了した。今後、教育用の視聴覚システム等を整備して、教育環境の向上をさらに図る。
- 東京サテライト教室の教育環境の整備
- 東京キャンパス化計画の検討
6.管理・運営
1)効率的人員配置
大学設置基準を満たし、且つ在籍学生数を踏まえた、適正な人員配置を実施する。
区分 | 教授 | 准教授 | 講師 | 助教 | 助手 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
教員数 | 17 | 5 | 4 | 6 | 0 | 32 |
うち昇任 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
うち新採 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
区分 | 非常勤講師数 | 前年度比 |
---|---|---|
職員数 | 51 | 0 |
区分 | 専任職員数 | 前年度比 |
---|---|---|
職員数 | 24 | 0 |
うち新採 | 1 | – |
区分 | 専任教員数 | 前年度比 | 専任職員数 | 前年度比 |
---|---|---|---|---|
萩 | 18 | 0 | 18 | 1 |
東京 | 14 | 0 | 6 | ▲1 |
計 | 32 | 0 | 24 | 0 |
2)収支改善策の推進
確実な収支計画の遂行に向け、良好な財政状況を維持することが必要なため、引き続き経費の見直し・削減に努め、予算管理体制の確立に努める。
- 収入
- 学生募集活動の強化
- 計画的な指定強化クラブ部員の確保
- 一般学生獲得のための大学の特色アピール
- 競争的資金獲得
- 研究体制の戦略的強化による競争的資金獲得施策の推進
- 企業との共同研究、受託研究など学外研究資金の積極的獲得
- 国庫補助金支給対象事業等への積極的応募
- 寄附金等の積極的募集
- 未納授業料等の回収
- 学生への指導強化
- 学生募集活動の強化
- 支出
- 奨学金制度の見直し
- 授業料減免制度の見直し
- 人道教育の立場からの児童養護施設等出身者に対する支援
- 指定クラブ運営補助費の効果的運用
- 年次計画の作成と、定期的な監督会議でのPDCAによる評価と効果的な運用
- 外部に委託している契約内容の見直し及び適正な予定価格算定による契約による経費削減
- 見積合わせの徹底と適正な予定価格の算定による経費抑制
- 学内印刷の積極的な実施による外部発注によるコスト増の抑制
- 旅費の抑制
- 出張の必要性の確認、調整による支出抑制
- 研究費の支出基準の策定
- 研究成果向上に寄与する効果的な資金配分への取り組み
- 研究倫理の遵守及び研究費の適正使用の徹底
- 科学研究費助成事業等外部の研究支援事業の活用
- 光熱水費の抑制
- エアコン温度設定、照明の消灯、事務機の電源切りの徹底
- 奨学金制度の見直し